消化器の病気

慢性腸症

慢性腸症とは下痢や軟便が慢性的に続く症状のことを指します。実際には様々な消化器疾患が含まれているため、適切に診断を進めることが大切です。

【慢性腸症の分類】

・食物有害反応(食物アレルギー)

・抗菌薬反応性腸症

・炎症性腸疾患(IBD)

・リンパ腫

・腸リンパ管拡張症

【症状】

慢性的な下痢・軟便が特徴ですが、症状の程度は様々です。嘔吐がみられることもあります。症状の程度や期間によっては体重の減少がみられる場合もあります。血液中のアルブミンというタンパク質が減少するタンパク喪失性腸症という状態になると、腹水や胸水の貯留がみられることもあります。

【診断】

糞便検査や血液検査などによって、寄生虫疾患、膵臓疾患を除外します。食物有害反応の診断は、アレルゲンを含まない食餌に変更して症状が改善するかを観察します。抗菌薬反応性腸症の診断は試験的に抗生物質を投与します。IBD、消化器型リンパ腫、腸リンパ管拡張症の診断には超音波検査も補助的に使用されますが、確定のためには腸の組織をとって検査をする病理検査が必要です。

【治療】

・ステロイド剤

炎症性腸疾患(IBD)ではメインの治療薬となることが多く、リンパ腫や腸リンパ管拡張症でも用いられることがあります。副作用が問題となることがあるため、定期的な診察のうえ慎重に使用します。

・食餌療法

食物有害反応に対しては適切なアレルゲン除去食を与えます。腸リンパ管拡張症に対しては低脂肪食を使用します。高消化性のフードや食物繊維を増強した食餌が有効な場合もあります。当院では各種の療法食を取り揃えており、最も適切なものをご提案します。

・プロバイオティクス

乳酸菌などの有益な微生物を摂取させることによって症状の改善を期待します。重症のケースでは他の薬と併用することで効果を期待します。

・再生医療

当院は動物再生医療技術研究組合と提携しており、幹細胞を用いた慢性腸症に対する再生医療を提供できます。

膵炎

膵臓は食物を消化するための酵素を作っている臓器です。膵炎はこの消化酵素が何らかの理由で膵臓自身の中で活性化してしまうことで起こります。自分自身の組織が消化されてしまうことになり、激しい炎症を起こします。膵炎は犬にも猫にもよく見られる疾患です。

【症状】

急性膵炎では激しい嘔吐、食欲不振、腹痛、下痢がみられ、重症例では死に至ることもあります。慢性膵炎は一般に急性膵炎よりも弱い炎症が持続するか、または再発を繰り返します。一部薬剤や外傷によって発症するものもありますが、多くの場合原因は不明です。膵臓は血糖値を下げるホルモンのインスリンをつくっている臓器であるため、糖尿病を発症することもあります。

【診断】

血液検査では炎症マーカーの上昇やリパーゼやアミラーゼなど膵臓の酵素値の上昇が見られます。超音波検査では膵臓そのものや膵臓周囲の異常、小腸の運動性の低下などが確認できます。

【治療と予防】

・支持療法

急性膵炎では食餌をとることができなくなることが多く、また脱水症状を起こしていることも多いため、点滴が必要になることがあります。長期間にわたって食餌を摂れていない場合はカテーテル等を使用した栄養補給も行います。

・対症療法

嘔吐に対しては制吐剤や腸管運動改善薬を、痛みに対して鎮痛薬を使用します。炎症に対してはステロイド剤などが使われることもあります。フザプラジブナトリウム(ブレンダz®)は非ステロイド性の新しい犬膵炎治療薬です。

・食餌療法

犬の膵炎は食餌中の脂肪との関連が指摘されているため、低脂肪食を与えます。過去に膵炎を起こした子は、再発のリスクがあるため継続的に低脂肪食を与えていきます。

猫の場合は脂肪との関連は知られておらず、低脂肪食は不要です。一部アレルギー性の腸疾患と関連している場合があり、低アレルギー食が有効であることがあります。

・再生療法

当院は動物再生医療技術研究組合と提携しており、幹細胞を用いた再生医療を提供できます。犬は膵炎、猫は膵炎に伴う糖尿病が適応となっています。

犬猫診療のご相談

ご相談はお電話かLINEから

ワンちゃん、ネコちゃんの様子が普段と違うときや、健康状態をチェックしたい時は、LINEかお電話からお気軽にご相談ください。

こちらから今すぐご予約!

» 診療時間を見る